▼バラエティが人間を壊す その6
[2005年10月03日(月) ]

 

 私がテレビの「罰ゲーム」に関して「これはヤバい」と強く思うようになったのは、2002年の1月のことだった。

 それまでも、ワサビのたくさん入ったすしを食べさせられたり、青汁を大量に飲まされたり、プールに突き落とされたりといった罰ゲームはもちろんあった。イヤな感じはしたが、まだ大ケガをするなどの事件は起こっておらず「見なけりゃいいや」くらいに思っていた。

 しかし、私がその正月特別番組(どのテレビ局系列かは記憶にない)を見た時のショックは今も残っている。 その番組では、司会者が有名タレントの家を訪問して行き「いちばん大切にしているもの」を出してもらう。細かい経過を省略すれば、要するにクイズ勝負に負けると、その大事な「宝物」を壊されてしまうのだ。

 タレントが本当に大事なものを出してくるとも思わないので、どうでもいいものだったのかもしれないし、ダミーを作って壊したのかもしれない。しかし裏でどうなっていようと、映像の影響力には関係ない。

 すぐ後に、こういう誰かが大事にしているものを破壊する罰ゲームは『めちゃイケ』などバラエティですでにけっこう行われていることを知った。

 私は怖くなった。もし自分がずっと大事に保存してきたものを目の前で壊されたら……。思い出の品がなくなってしまったら……。私の心はボロボロになるだろう。そんなことをする権利が誰にあるのか。「見なければいい」問題ではない。

 そんなテレビバラエティを見る人は「人の大事なものを尊重する」ことではなく、面白くするためには「人の大事なものをないがしろにしていい」ことを学ぶ。自分がそうされたらどんな気持ちになるか……という想像力はしぼんで行く。

 私がここで書いているのは、私たちの心が病んでいる、ということである。「優しく」ないということである。カニエ・ウェストが言ったように、しんどい生き方を強いられている人々をいじめる社会がある。それをテレビが、とりわけバラエティが助長しているのである。

 きむあつさんが『水10! ワンナイR&R』のワッキーに対する罰ゲームに関して、10月1日付で「放送倫理・番組向上機構(略称=BPO)」に、番組に対する抗議を含む意見書を送信しました。今後は同番組を提供しているスポンサー各社に対しても、同様に抗議書を送信するそうです。この番組がいじめ=人権侵害を助長している、が主旨です。こちらからぜひ読んでください。

 「そこまでしなくても」という人もいるかもしれませんが、「こうでもしないと」制作側が気付かないのではないか、ということです。BPOやフジテレビに意見を送るのは簡単です。いろいろなアクションを起こしましょう。

 

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