▼ENDLICHERI ☆ ENDLICHERI「不完全 FUNKY WHITE DRAGON」の伝える「気」
[2007年03月17日(土) ]

 

 ENDLICHERI ☆ ENDLICHERI の DVD「不完全 FUNKY WHITE DRAGON」を見た。10月29日の100回目のファイナルライブを中心に構成されている。その場に自分もいたかと思うと、心が騒ぐ。

 ファイナルライブが MC も含めてほぼ完全に収録されているのがうれしい。ライブDVD の中には、たくさんのライブからよりすぐってつないでいくものもあり、それはそれで楽しいけれど、10月29日でなければ味わえない、ライブの「一期一会」性を味わうためには、最初から最後まできっちりまるごと見られた方がいい。

 当日の感動が、極彩色の光のページェントで始まるイントロダクションでいきなりよみがえる。★3月16日お台場セッション、スタートです。

 会場で参加しているのと違って、ケリーさんの表情や細かいステージ上での動きがよくわかる。

 まず感じたのは、ケリーさんは1曲1曲を大事に作り上げているということだ。曲ごとにすべて違う「気」を放ちながら歌っている、と言い換えてもいい。

 歌い方、ギターのあるなし、身体の動きはもちろんのこと、立ち位置やバンドメンバーとどうからむかまで、相当綿密に構成されているのがはっきりと受け取れる。その上でアドリブも入ったりするのだからすごい。

 したがって、ケリーさんのそれぞれの曲への「思い入れ」も大きく変化する。

 ある時はわざとラフに、ある時は凛としてひたむきに、ある時は自分の「宇宙」を伝えられているか考え込んでいるかのように、またある時は会場に「気」を合わせ、またある時は「そうあってほしい」という願いを込めて。

 ふだんの会場では見れないケリーさんのアップを見ながら、私は、そうした表現への思い入れとは別に、彼は何を考えながら歌っているのだろう、とふと思った。

 それを推測してしまうほど大胆であってはいけない、という教訓はやっと得たから避けるが、ヒントはある。

 10月29日にも会場の背景に投影された “incomplete” つまりこの DVD のタイトルにもなっている「不完全」である。 私は、もっと伝わる表現ができるはずだ、もっと自分で納得のいく歌が歌えるはずだ、と彼が絶えず、時にはライブ中にも自問しているように思えてならない。

 別の言い方をすれば、彼には、言葉にも、もちろん音楽にもならない形で表現したいことがたくさんあり、それをどういう形で多くの人に見せて行けばいいのか模索するのに、計り知れないエネルギーをかけている、ということだ。

 私たちから見てとてつもなくすばらしいライブでも、まだまだ彼にとっては「不完全」なのだろう。

 そして、それは人間が「不完全」であることともつながる。完璧な人などいない。だからこそ、私とあなたと、そしてケリーさんの胸宇宙はお互いを受け入れ合える「はず」なのだ。

 しかし現実はなかなかそうならず、人間同士、うまく関係を作れない場面が増えてきてさえいる。その意味でも「不完全」なのかもしれない。

 ケリーさんを見ていると、来ている人たちだけに向かって歌っているのではないな、と感じられる場面がある。

 目線が遠くを見ている。大宇宙へ向かって歌っているのだ。誤解のないように言っておくと、これはオーディエンスを無視しているのでは決してない。オーディエンスを含めたあらゆる人の胸宇宙(宇宙への通路を持つ!)へ届けと歌っているのだ。

 それによって、エンドリタンクには、愛にあふれた温かく優しい空間が作られる。そんな「気」を私も放てるようになりたい。

 ケリーさんがとびっきり「いい顔」を見せるのは、バンドメンバーと「気」が合ってコラボレーションが決まっているパフォーマンスをしている時の楽しい顔、そしてライブ終盤(特にアンコール)のここまで来れたという晴れ晴れとした顔だ。

 前者は、「遊び」感覚にも近い。さまざまなメンバーといろんなパフォーマンスを織り交ぜながら、かなり長時間にわたって展開し、最後に再びサビへ戻ってしめるという「Chance Comes Knocking.」のだいご味などは、本当に気分がいいはずだ。

 やはりバンドで音楽をやりたい、というケリーさんの気持ちが随所にあふれている。

 ギター、ドラム、キーボード、タップ、ロンダート……DVD がケリーさんの多様なパフォーマンスを網羅するように作られているのは、それぞれの役割を強調しているようにも見える。

 個人的に聴きたかったセカンド・セッションの「これだけの日を跨いで来たのだから」のアカペラ・ヴァージョンが収録されていないのも、そのへんに起因するのだろうから、満足して納得する。

 まだ1回しか見ていないけれども、見るごとに違う「気」を感じることだろう。やはり圧巻は10月29日のアンコール3曲とその間に挟まるメッセージだと思う。ここだけでも見てほしい人はたくさんいる。

 「空が泣くから」の CD とは違うヴァージョンが見られるのもうれしいし、「これだけの日を跨いで来たのだから」はやはり泣けるし、当日トリプルアンコールを求めながらほとんど誰も帰らず、結局みんなで「これだけの日を跨いで来たのだから」1曲を歌い切ってしまったのは、強烈な思い出、そして人生の宝として残るだろう。

 どうか多くの人にこの DVD を見て、「感じて」ほしい。どんなことでも、自分の「胸宇宙」に響いたことを「感じて」ほしい。[おまけ→英語の字幕が付いているのがすごい! 世界が視野に入っている!]

 

    07年3月18日ENDLICHERI☆ENDLICHERI》