▼浜崎あゆみの PV 等から考える音楽業
/芸能界の「素朴な疑問」[コメントのまとめ]
[2007年04月19日(木) ]

 

 4月8日の記事「音楽業界/芸能界は「素朴な疑問」がてんこ盛り」には、さまざまな「素朴な疑問」をコメントで寄せていただきました。ありがとうございました。

 最も多かった「素朴な疑問」は、アーティストのテレビ番組出演に関してです。特定の事務所(VISION FACTORY など)に所属するアーティストが、ゴールデンタイムの音楽番組にほとんど出られない、という件です。

 これは何度かこのブログでも記事にしていますが、偏った見解ではなく「事実」であることをまず確認しておきます。これは出演者の統計を取れば明らかにわかります。

 また実績や人気がないから出られないわけではないのは、例えば w-inds. に関して、「オリコン」のデータやアジアでの各賞受賞を参考にすればこれまた明らかです。 音楽(タレント)事務所の「抗争」は、1955年に実質的な日本最初のプロダクション「渡辺プロダクション」が日本にできてからすぐに始まっています。事務所を移ったり辞めたりすると、テレビやラジオに全く出られなくなったり、さまざまな圧力を
かけたり……。

 まず私たちが知っておくべきことは、今起こっていることは、日本の音楽業界の体質そのものである、ということです。事務所の力関係の中で、特定の事務所がテレビに強い影響力を与えているということです。また事務所がちょっと作戦を間違えると、あっという間にテレビに出られなくなる、ということでもあります。

 この問題で大事なのは、多くの人がその事実を知らない、ということです。音楽評論家たちも雑誌などのメディアも、仕事に圧力がかかるのを恐れてなかなか書きません。それでも「日経エンタテインメント!」5月号、が芸能プロ特集をして力関係に迫るなど、少しずつ事態は動きつつあります。私もさらにこの問題を多くの人に知らせていきたいと決意しています。

 最近私は、この問題に対してテレビ局側にも責任が在るのではないか、とより強く思うようになりました。

 本当にいい音楽を視聴者に届けようと思ったら、事務所の壁を取り払って番組を作るべきでしょう。かつてそういう番組は存在していたのですから。音楽をきちんと伝える音楽番組も少なすぎます。トークやゲーム中心のバラエティではなく、じっくり音楽を聴かせる番組をゴールデンタイムにドーンと置いて欲しいものです。

 「音楽番組はなぜこんな深夜なのでしょう。POP ジャムや CDTV などいろいろなアーティストを見れる音楽番組があと一時間はやく放送してくれたらもっと見やすいのに、といつも思います」(おおさかみかんさん)。

 「Mステって何なんでしょう?いつも同じ顔ぶれ。日本の音楽を全然網羅してない。でも、アーティストにとって、Mステ出演がステイタスになりつつあるのも事実。だからこそ、もっとたくさんの歌を視聴者に届けて欲しい。たくさんの人に聴かれずに、消えてゆく曲たちがもったいない。そんなわけで、Mステさん、もう少し頑張って下さい」(コチさん)。

 おふたりの言う通りです。もっともっとテレビ局が姿勢を正せば、ステキな音楽番組が作れるはずです。 プロダクションやレコード会社の姿勢についても、たくさんコメントをいただきました。CD の販売方法やアーティストの扱い方など、問題は多岐にわたります。

 才能あるアーティストをうまく育てられないプロダクションもあります。ファンに対するサービスがなってないプロダクションもあります。ブレイクさせる意味がわかっていないプロダクションもあります。 「芸能界は本当にタレントを『商品』『機械』として扱ってますよね。浜崎あゆみさんは『alterna』という曲の PV で、自分を『singing machine』と例え、マシーンである自分が壊れたらゴミに出されるというストーリーを構成しています。芸能界では労働基本法があてはまらなくても違法にはならないのでしょうね」(RENAさん)。

 本質をついたコメントです。

 私もこの PV を見てみました。工場でロボットを作るように「歌う機械」が生産され、すべてをバックに操られ、最後はゴミ捨て場で口をぱくぱくやっている映像は歌詞と共に衝撃的です(こちらから見られます)。これを浜崎あゆみが作ったことに秘められたメッセージは大きいと思います。

 PV についてもこんな意見があります。「どうして邦楽はこんなに PV を出し惜しみするのでしょうか。洋楽だとネットでほとんど見れるし、MTV とかの番組も充実してますよね。まさに“プロモーション”ビデオです。日本でも同じ呼び方をしてる割には『お金出して DVD 買ってくれる人以外には PV を目にする権利などない』くらいの勢いで全然接する機会がありませんよね。最近は期間限定ストリーミングとかやっ
てますが、わざわざお金かけて撮影したのにほとんど TV でもネットでも流れないのでは何のために作ってるんだか・・・。いちいちシングルに DVD 付けて値段が高くなってるのもキライですが、作ったっきり商品化すらされない PV もすごく多いですよね(特にマイナーアーティストの場合)」(jun さん)。


 この意見には激しく同感です。どんどん売り方がせこくなってきています。

 それにしてもプロダクションやレコード会社の問題は、週刊誌の一部が興味本位にかきたてることはあっても、メディアはなかなかまともに取り上げません。その経営者などが不祥事を起こしても、他の企業よりも扱いが小さく抑えられることがあります。

 裁判で有罪判決が確定したのにほとんど社会的責任が問われなかったケースもあります。喫煙や飲酒で芸能界を去らねばならない若いタレントがいるのに比べて、不公平を感じます。

 「違う曲が入っているのになぜランキングでは同一 CD としてカウントされるのか」(ようこさん)。

これは正確には『オリコン』ではどうして、ということになります。
「サウンドスキャン」「プラネット」などでは別々にカウントしており、チャートをどう読むか、も大きなテーマです。

 ファンのあり方についてもコメントが寄せられました。事務所と一部ファンが結び付いてあおっていることはないか、というものです。これに付いては確証はありません。しかし事務所が窮余の策としてフアンを利用していろいろなことを押し進める、というケースは見てきました。

 芸能界/音楽業界は「伏魔殿」[魔物が隠れていて陰謀などがいつもめぐらされている所]です。まずはその実体がもう少し明らかになるように、正確な情報を少しでも広めて芸能界/音楽業界を見つめる人の視点を変えていくことが急務だと思います。

 

  《 07年1月4日音楽業界