▼関ジャニ∞、横浜アリーナで舞う[後編]
[2007年05月08日(火) ]

 

 それにしても関ジャニ∞のライブは、けたはずれに楽しい。

 ヒット曲でいきなりテンションを上げ、あいさつの後ハードでカッコいい曲をはさんでソロ4曲、ここで「∞レンジャー」、2曲をトロッコで周回しながら歌って MCへ、「いつか、また...。」をアコースティックに歌って美しく締めてソロ3曲、ジュニアメドレーをはさみ、レパートリーと新曲、みんなで歌うコーナー、エンディング、アンコール……。

 ほとんど休む時間もなく、何度も着替え、楽器を持ったり置いたりし、動から静へ静から動へと急激な転換も何のその、ショウを見せ切ってくれる。私たちも時間を忘れて、そのきらびやかな世界にたっぷり浸ることができる。そして日常生活に戻っても自分の中から引き出せるパワーをため込むことができる。

 メンバーもこの「めくるめく」展開を楽しみながらも、プロとして全力で疾走している。とはいえ、そうとうなエネルギーを使っているはずだから、くれぐれも全国ツアーのハードスケジュールの中、体をこわさないように祈りたい。

 5月6日の横浜アリーナでの最終ライブについては、何をおいても3大ハプニングを書いておかねばならない。 まず「∞レンジャー」(ストーリーは「中編」参照)。マネキンの女の子に告る役
を、それまではブルー(安田章大)がやっていたのだが、いきなりパープル(村上信五)がブラック(横山裕)に指名されて代わりにやることに。あせりつつもパープルは、彼なりの脚色を加えてやり切ってしまう。「できるもんやなぁ」(横山)。たぶん、誰が指名されても役をやり切れるだろう。それほどステージの流れをみんなが頭に入れているのだ。

 少しのとちりがあっても何のその、抜群のチームワークでカバーして終わってみればヴァージョンアップ。途中の「私ならこう告る」(伊藤の勝手な命名)コーナーも人数増の大サービス。尾崎豊「15の夜」を歌って「オレといっしょにバイク盗まないか」と決めたり、超難しい恋愛関係を設定したり、みんな芸達者だ。

 次のハプニングは MC で。途中、同時にライブ中の関西ジャニーズ Jr. に携帯で電話して交流するのも珍しくうれしい試み。メンバー全員が後輩へメッセージを送るが、丸山隆平の物まねを続けて自分の名を明かさない横山裕に対して、電話の向こうで「横山さんでしょ」と見破られるなど、心温まる「ズッコケ」交流。

 さらに電話が終わってサプライズ。いきなりハッピーバースデイの合唱となり、会場も大迫力で唱和する。ひとりとまどう横山裕。5月9日が彼の誕生日とかで、3日早いけどお祝いをすることになったらしい。

 ∞形のケーキが運ばれ、お約束のロウソクふき消し。続いて彼がいちばんほしかった眼鏡で観られる DVD プレイヤー(?)のプレゼント。「いつ買ったん」「いつ相談してたん」と驚きまくり興奮しまくる横山。「ホンマうれしいわ」「ホンマびっくりしたわ」を合わせて100回は言っていた。「こんなリアクションしかできなくてごめん、でも、ホンマびっくりして……人間ってこんなに驚けるもんなんやなぁ」「オレ、今日を誕生日に変えようかなぁ」。

 会場のエイターたちからも「おめでとう!」の嵐。メンバー間に立ちこめる友情の「気」に包まれるのはいいもんだ。こちらまで「ホンマうれしく」なってくる。

 そんな中でも、うしろで何気なくケーキを食べていたりするメンバーがいるところがとぼけていて面白い。それぞれが「マイペース」を持っているから友情の「気」はさらにいっそう穏やかでほのぼのしたものになる。 そして3番目のサプライズ。アンコールに「無限大」と「ズッコケ男道」を華やかに歌って退場しても、止まない拍手と声が横浜アリーナ全体に大きく響く。規制退場を指示する係員が出てきても誰も聴いていない。ついにダブルアンコール「関風ファイティング」。

 メンバーが会場に向かって「歌って!」と言うと、参加しているエイターのほぼ全員が完ぺきに歌詞を覚えていて、最後まで歌い切る。メンバーは会場を周回しつつ大サービス、1人または数人でいろいろなパフォーマンスも見せてくれる。「すげーよ」「感動!」と叫びながら。

 メンバー退場後、今度は具体的かつ本気にと規制退場の指示が始まる。「まずスタンド席の○ブロック……」。しかし、誰も席を立とうとしない。必死のコール。 するとついに! 「これは想定外」という顔をしたメンバーたちが再登場。3人はもう上着を脱いで上半身裸になっているくらいだから、「ホントに何も用意してない」という横山の説明も納得。歌うのが厳しい状況なので「どうすりゃいいの?」と横山が会場に尋ねたりする。

 そして横山が会場に「これで絶対終わりだからね」と約束させてから、メンバーで円陣を組んで相談、「サムライブルース」に決まる。メンバーたちもさすがに疲れ切った様子で、ピンチヒッターは会場のエイター全員。「すげー」とメンバーに感心されながら、再び歌い切る。メンバーもそれぞれのサービスパフォーマンス。もう泣き出しそうな人も周りにちらほら。3時間を10分も超えてライブは終わった。

 エネルギーを使い果たしてもエイターの前に出てきてくれる、彼らの「情」の深さ(どうしてもファンに感謝の気持ちを表したい、という優しさ)に身が引きしまる想いがした。その心の広さを私たち自身が受け取って、温かいエネルギーにして内面からにじみ出させるような生活をしなくちゃ、と感じた。彼らに要求し過ぎて身体に響かないように、その微妙なバランスも課題かもしれない。

 少し脱線して、微妙ついでにもっと微妙なことを書くと、MC で横山裕が、スタンドから歩いて降りてくる時に「初めてオチ○チ○触られた!」と話し出すと、「ホンマはそれ電車とかで乳房触るチカンとおんなじやで」「下からガーンと来ると困るんよ」などと盛り上がり、渋谷すばるが「野球のキャッチャーがそこに当てるとめっちゃ痛がるでしょ」と解説し、「下からガンとやると痛いんで、こんなふうに(しぐさ付き)上からなでて下さいね」とまとめる。

 こんなきわどい話をさらりとやれてしまうのは、彼らとエイターたちの相互信頼をベースにしたステキな魅力のひとつだけれど、ちょっとこの話は笑っているだけではすまないかもしれない。

 彼らは笑い話にしつつもマナーを訴えている気もした。さりげなく冗談ぽく、触られても気持ちは良くない、という発言も混ざっていたし。メンバーとエイターの「絆」がほつれないよう心したいものだ。 毎回大きく変わるライブ。それがライブの本質であるとは言え、計算して再構成された変化と、ハプニングやアドリブによる変化との両方がうまくかみ合って、いい味を出していくのはそうやさしいことではない。

 一人ひとりの持つ表現力がどんどん高くなっていくと同時に、何が起こっても全員で対応していこうという仲間意識と気合いがみなぎっているからこそ、ライブのうねりが作り出せるのだと思う。こうしてライブが充実していく様子を見るのは本当に感動的だ。

 大阪弁が好きな私としては、言葉による人間関係を作る力の違いも感じてしまう。「いいんじゃない」と「ええよええよ」にはやはり文化の違いがあり、きつい言い方もするけれど、結局はみんな人間お互いちょぼちょぼなんだから、のんびり行こうや、みたいな大阪文化の方が、カリカリしない人間関係を作れるような気がする。東京弁ではどうしても勝ち負けにこだわっていやらしくなり、マジで人を傷つけてしまいやすい言い回しが多い。

 そして6月6日発売のアルバムにはものすごく期待したい。今回のライブでも披露された「二人の涙雨」と「さよならはいつも」は超名曲で、前者はまるで 60〜70年代のムード歌謡。後者はつい涙腺がゆるむ壮大で温かいバラード。この2曲をカップリングにしてシングルにしたらすごいんだけれど。

 そしてメンバー全員のソロ曲が入っているのもうれしい。切々と歌い上げる錦戸亮(「stereo」)、歌詞もメロディもカッコいい村上信五(「Forward」)、人と人のつながりを明るく歌う丸山隆平(「MAGIC WORD〜僕なりの〜」)、感情をしっかり込めた大倉忠義(「守りたい」)、鋭い視点が新鮮な安田章大(「わたし鏡」)、声量に圧倒される渋谷すばる(「琉我」)、ノリノリのラップが楽しさの極みの横山裕(「WONDER BOY」)、どれもこれも魅力的で個性的で、それでいて希望とか自分らしくいきていくこととかコンセプトに共通点がある。早くじっくり聴き込みたい。

 ペンライトが美しく揺れる会場にメンバーが散らばって歌う曲がある。広いアリーナのすべてに関ジャニ∞の「気」が満ちて、幻想的にさえなる。これだけの個性が集まって、それを単純にたし算する以上のパワーが生まれている。早く彼らに再び逢いたい[完]。8→1

 

  《 2007年5月7日関ジャニ∞