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 予備校講師時代から英語の学習法の革新を目指している。原点は、中学校と高等学校における英語教育のあまりの貧弱さ。会話はリアルさが全くなく興味を持てないし、文法はバラバラに出てきて体系性がない。生徒が「どうして3人称単数現在に -s が付くのか?」といった素朴な疑問を出しても答えてもらえず、「ひたすら暗記」主義がまかり通っている。

 そうした学校英語の問題点を徹底分析、英語と日本語を比較しながら、「ポン・ポン・ポン」のリズムとともに、誰もがかろやかに学べるわかりやすい「伊藤式英語学習法」を提起。英語が全くわからなかった、あるいはわからずに困っている人も、面白いように英語が読み書き話せるようになる。たくさんの参考書を世に出している。

 最新刊に『3びきのこぶた式 世界一ラクラク英語がわかる本』(廣済堂出版)。あいまをぬって個人指導もしている。

 『伊藤式英語学習法』のウエブサイト

 
伊藤式英語学習法のおもな本
3匹の子ブタ式 世界一ラクラク英語がわかる本 こんな風に学びたかった英語 究める英語 必勝これだけ英文法 これだけ英文法
 
英語エッセイ1 ▼“on the desk”

 

 学校の英語教育は、的外れ、不親切、時にはウソであふれています。“on the desk”を「机の上に」と習うので、“on the ceiling”や“on fire”を「天井の上に」「火の上に」と訳すと間違いだと言われてしまいます。さらに「“on”には2つ以上の意味や用法があるんだから覚えとけ」なんて言われて「あ〜また覚えんのか」とイヤになってしまった人もいるでしょう(この「用法」って勉強意欲をそぐ感じ悪い言葉ですね)。

 でも、ここには実は胸がすーっとするある規則が隠れていて、それを知れば、“on”を日本語に置き換えるのが容易になるばかりではなく、いろんな応用的発想ができるようになり、英語が楽しくなっていくんです。どうしてそれを教えられる教員がほとんどいないのでしょうか? 

 日本の学校では、歴史的に、子どもの立場に立ってどんな授業をしたら最もわかりやすいかよりも、とにかく詰め込むことを優先しそれに耐えられる子どもだけを優遇してきました。特に英語は、「語学だから」と考えずに「暗記すればいい」がまかり通ってきたのです。

 しかしこの“on”など、この単語のもともとの意味を知るだけで、いとも簡単に使い方が理解できてしまいます。“on”は、“on A”で「Aにくっついて」という意味が基本中の基本です。その「くっつき」方は問いません、とにかくAに接触していれば“on A”で、抽象的に「くっついて」いる場合にも使えます。

 したがって、“on the desk”は「その机にくっついて」いる状態を表すのですが、通常、机と物体の関係は、その上に乗っかっていることが圧倒的で、机の裏や側にセロテープで貼ってあるのは盗聴器くらいなものです。ですから、英語を話している人々は、“on the desk”は「その机にくっついて」と本当に考えているわけで机の性質から上にあることを容易に想像できるわけです。そう、ですから、“on”を「〜の上に」と覚えるのは間違いなんですね。

 こうなるとどんどんわかって来ます。“on the ceiling”は「天井」と物体の関係を考えれば、その上の屋根裏にいるのではなく「天井に」付いているのであり、“onfire”は火にくっついているのですから、「燃えて」という意味になります。比喩として「熱中して」と訳すときがあることも納得できるでしょう。

 まだまだ応用範囲はとどまることを知りません。“I depended on him.”(「私は彼に頼る」)“Lean on me.”(「私に頼って/もたれて」)にどうして“on”が登場するかまでわかってしまいます。頼る、もたれかかる、依存する、といった行動は明らかに、その相手(対象)に「くっついて」いくわけですから。

 こんなに世界が広がるちょっとした知識を多くの人たちが知らないでいるというの
は超極めてもったいないことです。

 

 
英語エッセイ2 ▼どうしても日本語には訳せない単語

 

 どうしても日本語には訳せない英単語がある、といったら驚きますか。それも、中学校で英語を習い始めてすぐ覚える単語の中にあるんです。そんな難しい単語を英語学習の最初に持ってくるなんて言語道断だと思いませんか。実は、その単語は、“sister”と“brother”です。

 英語を話す人の文化では、親を最低ひとり同じくする(定義が難しいですね、または契約で子どもとなる、まで言わないと正確になりませんね)女の子を“sister”、男の子を“brother”と呼びます。生まれた順序は全く問いません。したがって、日本語では区別される「妹」と「姉」、そして「弟」と「兄」は、それぞれ完全に同じ言葉で表されます。それで困らないのか、と思う人もいるかもしれませんが、これが文化の違いで、姉妹兄弟内の優劣は、かつて長男が財産を優先的に相続していた日本ほどは重視されないのです。

 もちろん、かつては年上に“older[elder]”、年下に“younger”を付けて区別していましたが、現代ではその必要性がさらに薄くなり、とりわけ日常生活で使われる場面がだいぶ減っています。

 だから、中学生から翻訳家まで、“sister”と“brother”をどう訳すかは、大問題です。なにしろ、「妹」と「姉」、また「弟」と「兄」をひとことで言い表す言葉は日本語にないのですから。まとまった小説や論文などで、生まれた順序がわかる場合は、「妹」「姉」にしてしまいますし、実際に資料などで生まれた順序を調べる翻訳家もいます。

 もっと困る単語もあります。“sibling”は、女性・男性の別なく、親を最低ひとり同じくする子どもを指します。こんな単語があること自体、年齢と性別にけっこうこだわる日本語的発想がグローバルでないことがわかって、頭が柔軟になりますね。

 さらに“they”も曲者です。時々、登場人物が女性しか出てこない英文を訳していて、この“they”が出てくると、思わず「彼らは」としてしまう人が意外といます。“they”はもちろん、“she”“he”“it”などの複数形なので、前後関係から「彼女たちは」「彼らは」「それらは」などと訳し分けなければいけないわけです。思わず「彼らは」になってしまうのは、そこから習い始めることと、日本文化の男性優位が反映されているのかもしれません。

 

 

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