テレビは検察・警察ペースで「狂騒曲」を奏でるだけなのか
[THE BIG ISSUE 2009年7月15日 123号]

 

 SMAP の草?剛は、4月23日早朝、東京はミッドタウン近くの公園でひとり全裸で騒いでいて、住民から通報を受け、逮捕された。そして5月28日に芸能活動に復帰した。テレビを始めとするメディアは、逮捕時は「とんでもない」一色、復帰時は「早すぎる」の声もまばらで「温かく見守る」雰囲気に満ちている。

 どうしてこうも手のひらを返したように扱いを変えられるのか。そしてもっとも大事な問題が例によって無視されている。草?剛が逮捕直後、家宅捜索を受けていることだ。

 もともと全裸であるところは誰も見ていないし、うるさかったとしても、警察が来て厳重注意して帰らせて、後で近隣の人たちに謝罪する……くらいでおさまってもおかしくない「事件」だし、警察もそんな対応をしてきた例の方が圧倒的に多い。

 それが、「この程度」の事件では通例ありえない家宅捜索までやるのはどうしてだろうか。タレントだから、というのも説得力がない。薬物を持っていないかを調べたのだとしても、やはり「この程度」の事件でいちいち家宅捜索していたら、警察の手間は莫大なものになってしまい破たんするだろう。

 ここでもちろん思い出すのは、元民主党党首・小沢一郎氏のことだ。第1秘書が逮捕されたわけだが、寄付をしたという行為が隠されているわけではないので、寄付をした団体が怪しいからけしからん、というだけのことになる。政治資金規正法違反として成立するかも微妙なほどである。おまけにその団体から金をもらっている議員は他にもたくさんいるのに捜査の手は伸びない。検察はこうした点で説明責任を全く果たしていない。

 小沢氏の件でも草?の件でも、検察・警察が「やり放題」なことが気になる。結果的に小沢氏は代表を降りることになったし(政権交替の命運を握る!)、草?はメディアに盛り上げるネタを提供しただけにさえみえる。

 これほどの問題点を全くメディアは追及していない。それどころか、この2つの「事件」で「辞めろ」だの「けしからん」だの、一方的なトーンで短期集中型の報道をして、フォローも何もしていない。検察・警察に沿ってメディアが動くことがどれだけ危険なことか、誰も気付いていないのだろうか。それによって世論を誘導してしまうことにここまで無自覚でいられるのはなぜなのか。

 メディアが「公正に」検察・警察のあり方も問題にできないのはどうしてだろうか。
すでに「言論の自由」がなくなっているのだとしたら、こんなに怖いことはない。

 

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