なぜ終わった「ゲゲゲの鬼太郎」
[THE BIG ISSUE 2009年5月1日 118号]

 

 4月の番組改編は、経済不況を受けて大胆な変更を行なったテレビ局が多い。全体としてドラマが減り、より安く作れる情報番組やバラエティが増えている。昼間の帯ワイドショー「おもいッきりイイ!!テレビ」(日本テレビ系)が、みのもんたを降板させ別番組に変わるなど、大物タレントの冠番組にも驚くほど変更があった。

 そんな中で理不尽に打ち切られる番組も少なくない。フジテレビ系のアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」は、3月上旬まで、もう1年続くようなストーリー設定だった。日本の地下にあって宇宙を支配する力を持つ地獄を悪用しようとする妖怪から護るために、47都道府県ごとに妖力の強い妖怪「四十七士」が選ばれていく。2回に1回は、いろいろなエピソードの中から「四十七士」が見つかり、地獄を護るチームが徐々に形成されていく。これが昨夏から始まり、今ほぼ半分のメンバーが揃っている。そんな設定を無視して、3月29日に突然最終回を迎えたのだ。

 この鬼太郎第5シリーズは、2007年に始まり、一時は、鬼太郎に恋する猫娘の想いが強調されすぎたり、妖怪が余りに「人間化」して「仕事もなんにもない」どころか金もうけにはまったりして、ポリシーを忘れたかに見えた。それが2008年初頭に、作者・水木しげるが最初に書いた貸本版「墓場鬼太郎」がアニメ化されて評判を得たのに伴って内容に修正が加えられ、人間社会に対する風刺性が戻ってきたところだった。

 本を読まない子どもに怒る妖怪が現れたり、乱開発によって住み家を追い出された妖怪が暴れたり、人間が「なくしてきたもの」を考えさせる路線は、ぜひ続けてほしかったのに、きわめて残念だ。「四十七士」のコンセプトはやや安易だが、鬼太郎ひとりの力に頼るのではなく、協同で難敵に当たる、という姿勢は共感できた。

 終わった事情は明らかにされていないが、視聴率よりも、並行して作られた実写およびアニメ映画の不調、キャラクターグッズ売り上げの伸び悩みなどが背景にある、と推測する記事もある。要するに、もっと儲けが多いアニメに取り換える、というだけの視点で、大事な意味を持つ作品が急に終了させられたことはまちがいがない。

 民放のテレビ番組は、次々と目先を変えて、視聴者を飽きさせずに魅きつけ、広告を見せるというスポンサーの要請から離れられないとはいえ、またスポンサーに大罪があるとはいえ、もう少し今必要な内容を放送する社会的責任を考えてもいいのではないか。

 

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