「県民性」を決めつける危うさ
[THE BIG ISSUE 2008年5月15日号]

 

 最近は、3ヶ月毎に編成が変わる合間のテレビ番組スペシャルもシリーズ化しているが、TBS 系の「決定! 全国47都道府県 超ランキングバトル!! 出身県で性格診断!? ニッポン県民性発表SP」も4月7日の放送で5回目になる(タイトル長っ!)。

 「独自に」1万人にアンケートして、その結果で、今回は日本一「めげない県」「さびしんぼうな県」「きれいずきな県」「親孝行な県」を決める。この1万人をどのように集めたのかは、まったく語られず(下請けのプロダクションがやるのだろうけれど)、ここからして信ぴょう性が疑われる。

 そのアンケートそのものも、はてなである。例えば「めげない」の場合を見てみよう。「練習を重ねてマスターしたことがある」「失敗は成功のもとと思う」「どんなに怒られても打たれ強い方」「ふられた相手にもう一度告白したことがある」「すべったのにまた同じギャグを言ったことがある」の5つのそれぞれにイエスと答えた人の割合が多い県が「めげない県」なのである。

 これでは根拠が薄いと制作者側も自覚しているのか、司会が「すべての人に当てはまるとは限りません」と1回だけ言うが、誰も聞いていない。

 ここで止めておけば「ご愛嬌」ですむが、さらに番組は「検証」を始める。ここが長い。「めげない」1位の県のできごとや資料を並べる。例えば、自然の災害に歯を食いしばって耐えた、労働時間が全国でもトップクラスに長い……。さらに、大量のドミノ倒しをその県の人たちにやってもらって、苦心して作り上げるまでを「感動のドラマ」に仕立て、やっぱりめげない、とあおる。

 これではやはりその県が(あえて県名は書かない)「めげない」ナンバーワンだなぁ、と視聴者の心に刷り込まれてしまう。各都道府県のイメージが簡単に決めつけられてしまっていいのだろうか。

 今テレビにはこんな形で、特定の集団の性質を過剰に一般化して、それをネタにスタジオで大はしゃぎする、という番組がたくさんある。ひとつの視点だけを絶対化し、「例外」を認めないところから、いじめもテロも生まれてくる。何しろ、一般化して「ある集団は○○だ」と言ってしまえば、ゆっくり丁寧に理解するという作業をしなくてよく、きわめて楽だから。この番組のために、○○県で「めげやすい」人がいじめられなければいいのだけれど。

 

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