テレビ局の「優先順位」の不可思議
[THE BIG ISSUE 2008年2月15日号]

 

 日本社会の、いや地球の異変を肌で感じられるようになってきた。気温や水温が乱高下する気候の変化、動植物の発生や移動における異変、どの地域にも見られるようになったシャッターが閉まった店ばかりの商店街……。

 客が少なくてもあくまでも深夜営業し、売れ残りの飲食物を廃棄しまくるコンビニは本当に必要なのか? 車を急加速しないように運転していると決まって後続車に遅いとバッシングされるが、どうしてそこまでみんな急がねばならないのか?

 これらは私たちのライフスタイルによって生じた地球の温暖化にかかわる話だ。1月4日、テレビ朝日系で4時間にわたって放送された「地球危機2008〜何気なく暮らしている人たちへ〜」は、内外の環境異変を丁寧に取材し、きちんと分析し、ただ危機をあおるだけではなく希望や提言も盛り込み、作り込まれたドキュメンタリーとしてきわめて充実していた。

 前述した実感もかなり取り上げられており、東京湾の水面のわずかな上昇で屋形船が橋の下をくぐれなくなり、千葉県館山沖でありえない南国のサンゴや魚が群生するなどの実態も見せられ、私の環境に対する感覚はさらに研ぎ澄まされずにはいられなかった。

 しかし、この番組の放送がなぜ1月4日なのか。なかみに見合った危機感を制作者側が持っているのならば、より多くの人が見られる三が日のゴールデンタイムにぶつけてもおかしくない。3日までは、タレントをたくさん集めてゲームやグルメに興ずるスペシャルばかりだ。そんなバラエティをたったひとつ禁欲するだけで「地球危機2008」を放送できる。

 この傾向は他のテレビ局も変わらない。三が日にこそ放送してほしい番組がその前後にたくさんあった。唯一の例外がテレビ大阪/東京系で、1月3日に「ガイアの夜明け」の特番「資源争奪の世紀を生き抜く」で環境破壊を取り上げていた。巨大国際資本が、穀物や資源に対する利権を求めて自然や生活をむしばんでいくさまを丁寧に追っていて見ごたえがあった。

 お正月は、難しいことを考えずにすべて忘れて楽しく……と言っていられる時代なのだろうか。普段から時代を意識した番組を作っているならいざしらず、お正月くらいは社会に目を向けてもらえないものだろうか。スポンサーも、視聴率を忘れることで逆に評価が上がる可能性に目を向けてほしい。テレビ放送の「優先順位」が狂っている、としか思いようがない。

 

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