理不尽なことに怒れるたくさんの「金八」を!
[THE BIG ISSUE 2007年12月15日号]

 

  TBS 系「3年B組金八先生」が、10月11日から始まった。1979年から続いているこのドラマもまもなく30年、第8シリーズとなる。金八は、開始当初の「熱血スーパーマン」というよりは、年齢を重ねる中で、悩みながらも子どもに寄り添い続ける教員となり、学校や地域や家庭の現実と向き合い、闘っている。

 それをあくまで「くさい」「不可能だ」と見る向きもまだある。しかし私はここ数シリーズ、この番組を観る視点が変わってきた。それは、今テレビばかりではなく、メディアで取り上げられることがどんどん減り続けていることを描いているからである。

 そのひとつは、温かい人間関係だ。身近にいる人を気遣う、思いやる、尊重する、そんな関係性の基本、別の言葉で言えばお互いの違いを受け入れていっしょに生きていく存在だと認識することが、どんどん失われつつあると感じるからだ。

 金八は生徒の話をとことん聴く。自分の想いを真剣に受け止めてくれる人が一人いるだけで、どれだけ人間は生きていく意欲がわくことか。また、この番組の各シリーズの終盤では必ず生徒たちの間に、かたちはさまざまでもお互いに支え合う関係が生まれる。理想と切り捨ててはいけない。人間関係のお手本がなければ、そこに向かえるはずもないからだ。

 もう一つ、これが私がこの番組を見る最大の理由でもあるのだが、理不尽なことへの怒りを表現することだ。

 金八は、公立中学でも始まった「学校選択制」の中で、生徒を集めるために受験とスポーツの成績を上げようとする校長に激しく異議を唱える。サッカー部のコーチが部員の力のなさをなじって傷付けた時には「謝れ!」と迫り、勝つためだけがスポーツなのかと強く主張する。テストの点数しか考えられない親にも、子どもをまるごと包んでやってほしい、ときっぱり述べる。

 ネット上に作られた3年B組「裏サイト」に対しても、書かれたことは「言葉なんかじゃない」と言い切り、匿名でなく自分自身で責任を持って表現することを訴える。周囲からうとまれても、覚悟の上で直言する勇気が金八にはある。

 温かい関係の模索や異議申し立てなどをしていると「勝ち組」にはなれない、という新しい競争社会の中で、ダサかろうが古くさかろうが、今どうしても必要なものが、あきらめずに理不尽なことを怒れるたくさんの「金八」であることに間違いはない。

 

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