ギャグ&シリアスドラマとしての「スシ王子」
[THE BIG ISSUE 2007年9月15日号]

 

 ドラマは前回も書いたように、現実的な描写と虚構との混ぜ方を中途半端にすると失敗する。テレビ朝日系深夜ドラマ「スシ王子」は、それをおもしろいかたちでクリアした。

 ストーリーはシリアスで、KinKi Kidsの堂本光一演じる主人公の米寿司(こめずしではなく、まいず・つかさと読む)が、沖縄は宮古島に伝わるという「自然流琉球唐手」をマスターする道のりを描く。習得のためには、スシを握ることを究めねばならないと言われ、全国を旅して、「悪徳」寿司店からの「刺客」とスシ対決をしていくというストーリー。

 厳しい修業を課されたり、チンピラと対決したり、あらすじだけ書くと、根性もの+美味しんぼ系+修業の旅、となるのだが、実は数分に1回はギャグがちりばめられていて、笑ったり微笑んだりする時間が妙に多い。

 それも、お笑いの歴史をたどっているかのような「古典的」ギャグが多い。第1回の冒頭など、チンピラにからまれた女性を助けようとした米寿司が、逆にその女性に助けられる。立場と性別から想像される状況が入れ替わる、これ実にギャグの定番中の定番。

 第3回では主人公が「閻魔」を読めず「らんま?」と尋ねる。一転して「悪徳」寿司店のボスも「らんま?」と読み違える。敵味方もどっこいどっこい。これまた常とう手段的ギャグ。

 「古典的」であっても、カット割が短く、ものすごいテンポで話が進むので、ギャグが多少ダサくてものせられてしまう。だから、フィルムの早回しによるスシの早握りなども、分かっていても「ほほー」と感心してしまう。そしてセリフのほとんどがギャグ化している。「アレをナニして」「わかりました、アレをナニします」……。「お前なんか握ってやる!」など、この番組を話題にした時に口をついてすぐ出てきそうな印象的な言葉もたくさん使われている。

 主人公の設定も、弱いのに強がる→自分を知る→本当に強くなる、と成長物語の典型。魚の目を見ると怪力を発するなどは「ポパイ」的手法。さらにストーリーは「勧善懲悪」。スシ対決により必ず悪が敗れるとわかっているので安心して観られる。

 かくし味としての、環境破壊的開発への批判も効いている。「悪徳」寿司店をはじめ、「敵」側は、リゾート開発を推進していたり、儲けるためだけの旅館経営しか考えていなかったり、どう転んでも共感できない対象にしてあるから、スシ王子がやっつければ拍手喝采!

 「荒唐無稽」もここまで徹底すれば小気味よいくらいおもしろい。さらに今はバラエティにほとんど失われてしまった、言葉や駆け引きや微妙な動作で笑わせる「古典的」手法を新鮮によみがえらせ、彩りをそえて面白さを倍増させる。人をおとしめ、いじめることでしか笑いをとれなくなりつつある「お笑い」界にも一石を投じている。

 

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